朝、窓を開けると昨夜の吹雪は嘘のようにやみ、眩いばかりの光あふれる銀世界が目の前に広がる……冷たく乾いた空気、キラキラ光る雪の結晶、遠くかすむ蒼い山、紺碧の空……
そんな感動を写真に残したいなぁと撮ってはみたものの、出来上がったプリントは真っ白な背景に黒い物体が並ぶだけ……
「こんなはずじゃないんだけどなぁ」
そんな、失敗写真の経験はないでしょうか?
冬の風景を上手に撮るコツを、写真の難しい原理にも少々触れながら、わかりやすく解説してみたいと思います。(得意じゃないんだけど……)
あくまで私の主観で書かれていますので、間違ってることや妙な話もあろうかと思います。その辺はご勘弁ください。
写真撮影の基本的なことはKonicaのホームページ内にある
「楽しい写真教室 基本編」 が役に立つと思います。
あわせてご紹介させていただきます。
※ 詳しい説明等はカメラ・フィルムメーカーのホームページにリンクしてあります。 参考にしてください。
露光 暗い室内から明るい屋外に出ると一瞬目がくらんで何も見えない。また、明るい屋外から室内に入ると真っ暗闇になって何も見えない。こんな経験は誰でもあると思いますが、しばらくすると目が慣れてきて徐々に見えるようになるものです。
人間(動物)の目は瞳孔が閉じたり開いたりすることで網膜に届く光の量を調整し、いつも同じくらいの明るさで見えるようにしてます。 これは、人間の目が持っているあたりまえの機能ですが、カメラで写真を撮るときも同様に、フィルムに届く光の量を「絞り」と「シャッタースピード」で調整して「いつも同じ明るさでフィルムに写るように」しているのです。 これが露出の原理であり、光の量を測っているのが露出計です。
ところが、背景が雪となると人間の目でもまぶしいはずです。これに対しカメラの露出計は過剰に反応してしまい、「もう少し露出値を下げよう」と判断します。ですからフィルムに 適正な露光 量が与えられず、露出アンダーのネガが出来上がり、濁った画像になる。 これが雪景色失敗の最大の原因です。
たとえば太陽(光源)の光が真横からあたる状態で白いボールのようなものをもって見てください。ボールの左右には光のあたっている白い部分から影の黒い部分までなだらかなグラデーションが出来るはずです。
このとき明るいところから暗い部分まで同時に見ていることになりますが、光のあたっている部分はまぶしさを感じるほどの白になるわけでもなく、影の部分も真っ黒というわけではなくやや黒い程度だと思います。(個人差や光の質、ボールの磨き方によっても差が生じますが……)
しかしこれを写真にとって見ると光のあたっている白い部分は見た目よりも白く、影の部分は見た目よりも黒くなって写ります。
これはフィルムと人間の目では明るいものと暗いものを同時に見れる幅(ラチチュード)に違いがあるからです。 一般にこの差は人間の目を2とするとフィルムは1、プリント用のペーパーではさらに狭くなるといわれています。 また、フィルムにはISO100・ISO400など、さまざまな感度の物がありますが、一般に高感度になるほど狭くなる傾向にあります。コントラストが高くなるという表現をする場合もあります。
雪景色を背景に写真を撮ったとき、写真上では人間の目以上に明るさの差が発生しますから、雪の背景は真っ白。人物は雪焼け以上に黒い顔……といったことになってしまうわけです。
これが雪景色失敗の第二の原因です。 さて、上の二つがおもな失敗原因ですから対策は……
1.カメラは雪景色を暗く撮ろうとしているので明るく撮る。
2.フィルムの明暗差は狭いので、明暗の差を減らしてやる。 ……と、言うことになります。
この方法はカメラによっても違うので、「レンズ付きフィルム」、「コンパクトカメラOrデジカメ」、「一眼レフカメラ」の三つに分けて解説してみたいと思います。
01/01/26一部修正加筆 このカメラの特徴はなんと言っても構造が簡単なことです。安価で手軽なこともあり、コンビニなどでついでに買われて、スキー場などに同行することが多い機材だったりします。
中身はいたって単純です。絞りは固定、シャッタースピードも固定ですから露出は常に一定です。構成するレンズ枚数も少ない(おおむね2群2枚)ので、フレアが出ることもすくないはずです。
つまるところフィルム上には明るく写ったり暗く写ったりで、プリント時に大きく補正され、どうにか見ることが出来るというのが現実です。
選択の幅も限られますが、ISO800のフィルムを利用した高感度のものは避け、フラッシュつきの低感度のものを選んでおくとよいでしょう。
おすすめはKonicaの「撮りっきりコニカMiNi3」です。パッケージの隅っこにISO400と書かれていることを確認してください。
に対するテクニック。 絞り固定、シャッタースピード固定により、露出は常に一定ですから、対策のしようはありません。
ただし、夕方3〜5時ごろの少し太陽が下がってきて暗くなった時間帯対を利用するのが好結果につながるかもしれません。
この時間帯になれば、太陽も斜め上からあたるようになり、雪の立体感は増すはずですから、レンズ付きフィルムとはいえ大作をGetすることも可能です。
フレア(ハレーション) による画質低下も少ないカメラですから。逆光、ノーファインダーなど、別の楽しみ方に走るのも面白いかもしれません。
に対するテクニック 日中の太陽の高い時間帯にどうしても撮りたいのであれば、 フラッシュを使い背景との明暗差を減らす のが一番効果的です。
日中シンクロといって実は高等テクニックなのですが、そこはレンズ付きフィルム。深く考えずに「 人物を撮るときはフラッシュOn 」と頭に入れておくとよいでしょう。
人物までの距離は3m以内にし、画面中央から外して背景を多めに取り入れると、結構見栄えのする写真が出来上がります。
コンパクトカメラは一番普及しているカメラ、最近猛追しているデジカメも大抵はコンパクトカメラを踏襲しています。
構造はズーミングしてシャッターボタンを押すだけと、ほとんどカメラ任せで撮れるようになっています。が、この辺がアダとなって、雪景色ではうまくいかないことも多いようです。
高級機になればISO感度を自分で設定したり、露出補正をかけることが出来るなど、ある程度意思を反映することも出来るのですが、自動巻上げのレンズ付きフィルムといった機種も多いようです。
に対するテクニック。 構造上 、基本的には対処の仕方がないのですが、デジカメの場合は露出補正の出来るカメラも多いようです。もし、マニュアルをご覧になって、露出補正が出来るようであれば、+1補正を基準に0.5〜1.5の範囲で調整してあげれば「フィルムに暗く写っている」という現象は回避できると思います。
また人間も日差しが眩しい時はツバのついた帽子をかぶったりしますが、カメラの上に手をかざし、日よけをしてあげると好結果を得られるかもしれません。
また背景を工夫して、林など暗い部分を画面に取り入れてあげると、適正な露出を得られることもあります。青空を多めに取り入れるのも好結果につながるはずです。
いずれにせよ、白一色の背景を避けるのが肝要です。
に対するテクニック フィルムはなんと言ってもISO100の使用をお奨めします。高感度のフィルムではコントラストが高くなりすぎ、失敗の元です。
そして、フラッシュの利用が一番です。ほとんどのカメラはフラッシュの強制発光モード(フィルインとか)を持っていますから、積極的に利用してみてください。ただし フラッシュの届く範囲 は限られていますから、主被写体(人物など)は3m以内にし、ズームを広角にして背景を取り込むと状況描写が出来てよい写真になると思います。
ちょっとこだわりだすと、結局このカメラに落ち着いてしまう。ということになりますね。
レンズ交換によりさまざまな画角が選べ、機能も充実していますから、さまざまな設定を試しながら撮影することが出来ます。
ただし、レンズの構成枚数が多く、この辺がアダとなってフレア・ゴーストといった現象に悩まされることもあります。
よいことばかりではありませんが、レンズを通した光景を見て撮れることが最大の特徴です。
に対するテクニック。 Av、Tv、M等のクリエイティブモードにすれば「露出補正」も簡単に行うことが出来ます。多分割測光(評価測光)でもともと露出は安定しているのですが、おおむね+1を基準に補正をしておけば、適正なネガを作ることが出来ます。
に対するテクニック 人物の入ったスナップを撮るときは、やはりフラッシュが基本です。
風景などを撮るときは、太陽が横からあたる斜光の状態を利用してメリハリを出してやるのが一番だと思います。
また、カメラをローアングルで構え、青空を多めに取り込んであげると綺麗なプリントに仕上がることが多いようです。
さてここまではスナップ写真を中心に綺麗に撮るコツを書いてみましたが、次は冬の被写体として面白そうなもの、冬らしさの出る撮影条件などをちょこっと書いてみます。
雪は鏡?
季節の気まま写真「冬の6」ですが、これは雪原に夕日が反射したところを撮ったものです。このような表現は、ネガでとってプリントを依頼してもなかなか本来の色を表現できないのですが、試してみると面白いと思います。
デジカメで撮影する場合は、ホワイトバランスを昼光(お日様マークなど)にあわせると良いかもしれません。機種に依存しますので、取説等を参照してください。
雪は白いだけではなく、いろいろな色を反射しますから、そんな色を探して撮って見るのも面白いと思います。
特に夜の水銀灯や電灯の光などは、不思議な光景を撮ることが出来ます。
ところで奥信濃にはナイター設備のあるスキー場が点在しています。このナイター照明が低い雲を照らすと不思議な色を映し出します。そんな写真はまた次の機会に……
空の青
雪がやんだ後の青空は格別な蒼さをしています。この空を見るたびに
「冬もいいもんだな」……と思えてきます。
PLフィルターなどを使って、より蒼さを強調しても面白いと思いますが、太陽を背にして撮れば、手軽に青を手に入れることが出来ます。
雪に覆われてほこりが立たないので、空がかすまないのです。
冬のすがすがしい空、じつはこれが雪国ならではの魅力だったりします。
なんと言っても造形の面白さ
ほんの少し積もった雪の上を走り去った車のタイヤ痕を撮ったものですが、波打つように積もった雪と蹴散らした雪のかたまりが見て取れると思います。
雪は白いキャンバスのようなもので、降り方によりいろいろな模様が出来たり、下のウサギの足跡のようにいろいろなものが残されたりします。
ある意味では一瞬の芸術、造形美、という面では空の雲にも匹敵するフォトジェニックな対象だったりします。どう切り取るかで面白い表現が出来るかもしれません。
この写真は大きくしてみることが出来ます。
この写真はスキー場のナイター照明をバックに撮ったものです。風景写真として扱ってよいのかとなると微妙なところですが、冬の夜は晴れていればいろいろの光で意外と明るいのです。
月明かりで長時間露光をしてみると、昼の写真とは一味違う、不思議な空間を表現できることがあります。
バルブ撮影が基本になりますから、丈夫な三脚とレリーズが必要になります。フィルムはISO100などの低感度のものを使うことをお奨めします。
この写真は大きくしてみることが出来ます。
ウサギの足跡を撮ったものです。
ほんとうは昼間の明るい状況で撮ったものです。ところがご多分に漏れず露出を失敗してしまいました。それが逆に面白い表現になったので、載せてみました。
雪に落ちた影や造形はなかなか面白いものです。失敗など気にせず、いろいろなものをどんどん撮ってみるのが、何よりだと思います。
これは写真全体に言えることかも知れませんが、光と影をどう読むか、フィルム(デジカメの場合はCCD)にどう残るかを考えながらシャッターを押すのがよい写真につながるコツだと思います。
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